サードアルバム「愛と例話」が8/4(水)にリリース決定決定しました。
前作から約二年ぶりとなるサードアルバムが完成。
2020年にリリースした、「invisible」、「夏百物語」、「もしもし?もしもさぁ」を始め全10曲を収録。
新アーティスト写真、ジャケットも公開。
アーティスト写真は元(天国)、ジャケットはカドワキリキが担当。
また、有泉智子さん(MUSICA)より、作品コメントを頂きました。
サードアルバム「愛と例話」
発売日 8/4(水)
品番 UKCD-1193
値段 2,970円(税込)
レーベル UK.PROJECT
収録曲
1.宣誓
2.もしもし?もしもさぁ
3.とめられない
4.光とロマン
5.夏百物語
6.メアリー、無理しないで
7.遊泳地
8.燕
9.invisible
10.I just want to dive in REIWA!!
▼新アーティスト写真
▼ジャケット写真
▼有泉智子さん(MUSICA)作品コメント
私達はなぜロックバンドが歌い鳴らすその一編の曲に自らの人生を重ね合わせてしまうのか。なぜロックバンドが歌い鳴らすその音楽に「自分の居場所がここにある」と感じてしまうのか。なぜロックバンドが歌い鳴らすその様に心救われ背中押され、そこに光とロマンを見出すのか。
——そんなことを今さら問うのは野暮なことなのだろうし、さらに言えばこの1年以上の間、人によっては音楽なんて所詮は飯の種にもならない不要不急なものなのだという事実をたくさん目の当たりにすることもあったけれど、だけどやっぱり、上手く言葉にすることも整理することもできない、いつの間にか重く心に溜まった澱のようなものを掬い上げ、晴らし、またそこから一歩踏み出していく力を、ロックバンドが生み出し奏でる音楽は不思議なほどに持っている。すべてが空虚に思えたり、すべてにうんざりしたり、不安と苦痛で吐きそうになったりしようとも、それでも生きるということの中にあるはずのロマンにも似た何かを、どうにも求めて焦がれてやまない光にも似たその何かを、胸に蘇らせ、たぎらせ、今を乗り越えて明日に手を伸ばさせる力を、ロックバンドは持っている。
tetoというロックバントとその音楽は、まさにその真髄を体現していると、ここに完成したアルバムを聴いて改めて強く思う。
2019年10月にリリースされた『超現実至上主義宣言』以来となる、サードアルバム『愛と例話』。混乱と混沌の渦中で幾重にもこんがらがった世界を蹴り飛ばすような、そこにある閉塞も退屈も、虚無も悲哀もやるせなさもすべてを飲み込んで突っ走るような、ガムシャラで前のめりなエネルギーが全方位で爆発していく冒頭3曲。矢継ぎ早に言葉を溢れさせながら叫び歌い、奔放な軌道を描きながらどこまでもドライヴしていくタフで自由なバンドサウンドが、目の前にかかったモヤを爽快に切り裂くところからこのアルバムは始まる。
全10曲38分。15曲ずつ詰め込まれた過去2作と比べると曲数を絞ったとも言えるアルバムだが、このアルバムには彼らがここまでの道程でモノにしてきた進化と深化が濃度高く結実している。前半のハイライトを撃つ名曲“光とロマン”からも明らかな通り、ソングライティングにしてもバンドの鳴らし方にしても、奥行きのある詩情をスポイルすることなくスッと核心を突く作詞にしても、明確に過去最高点を叩き出しているアルバムだと言っていい。オルタナティヴ、パンク、エモ、そしてマシンガンのような譜割で衝動を瑞々しくメロディに転化させる一方で、美しい日本語の情緒を宿した歌心をも併せ持つ、そんな彼らの音楽的な素養が楽曲ごとに見事に昇華されている。1曲1曲、表現したいヴィジョンをしっかりと具現化していったであろう楽曲群は、ロックバンドソングとしての王道性を持ちながらも退屈なクリシェに回収されることのない鮮度とアイディアに満ちていて、完成度がとても高い。
どの曲も音の手触りが生々しい。ボトムの太いリズム隊を中心に重心を落として荒地を蹴る瞬間も、空間系のエフェクトを纏いながら重力から解き放たれ天を駆ける瞬間も、記憶の奥にある景色を手繰る瞬間も、まだ見ぬ明日に想いを馳せる瞬間も、その瞬間に心身から溢れ出す止むに止まれぬ想いと衝動が、焦燥と渇望が、熱が、とても生々しく、とても美しく、歌声も含めたバンドの演奏の一つ一つに息づき、それを音楽作品としてパッケージすることに成功している。ロックバンドの演奏が時に放つ譜面にはできない何かが、確かにこのアルバムには宿っている。それは理屈を超えて深く、鮮やかに、聴き手の心を打つ。
前作『超現実至上主義宣言』の際に筆者が行なったインタビューで、小池貞利は「人間はただお互いにそこに存在することを認め合うしかない。俺には『あなたはあなたのままでいいんだよ』とはまだ言えない、俺が言えるのはただ『あなたはあなたとしてそこにいる』ということだけなんです」と話していた。その気持ちは今も変わらないのだろうけれど、より踏み込んだ表現で歌い掛ける場面が増えた。それはきっと、誰よりも彼自身が混沌とした今この時代・この社会の中でもがき、自分と向かい合い、音楽と向かい合った中で、自身が歌うべきものとして出てきた言葉達なのだと思う。<大切に守るべきものを迷わず選ぶから/あなたがアート、あなたが花だから離さぬよう/どこで生きていたって>、<未知で満ちた道をまた一から作り出す>(“もしもし?もしもさぁ”)、<誰かの最低も最高も塗り替えてえ/氷が張り詰めている世の中にひびを入れる>、<明日を信じ、ただ苦虫を噛む/穴空いた雨傘をさし、鮮やかな朝を待つあなた/その未来も光に溢れますように/この歌が兆しになりますように>(“とめられない”)、<いつの日か誰かを心から/愛せるようになれたら誰かの心も傷つけずに済むのだろうか?まぁいずれわかる/現実を歩く俺らせめて音の渦の中で求めるさ、光とロマン>(“光とロマン”)、<愛を幻想と語るのなら/あの人が何も言わずそっと掌で背中を押してくれた/あの温もりをなんと呼ぼう>(“遊泳地”)、<透明のままであれば叶うことはないのでしょう そうか>(“invisible”)……挙げていけばキリがないほど、パンチラインというべき歌詞が多い。<悲しみは君の血肉だと言う/だが喜びを捨てる理由にはならない>、<君の代わりなどどこにも居ない/だが君の役はきっと誰かが埋める>と、愛をもって退路を用意する“メアリー、無理しないで”も、自ら命を絶ってしまう人が多い昨今の中で、ひときわ印象的に響く。
そう。まるでオープニングナンバーかのようなテンションで掻き鳴らされるハードコア始まりのラストソング、“I just want to dive in REIWA!!”で聴き手を現実へと送り出す構造も含め、この『愛と例話』というアルバムは、ままならないこの世界への、この人生への、そして、荒波をかき分けるようにもがきながら今を生き抜こうとするあなたへの、tetoなりの渾身の愛の歌、なのではないかと思う。日々の中で惑う時、居場所を見失いそうになる時、この歌が、この音が、私の傍らで私と共にあることが明日を繋ぎ止めてくれるだろうという予感がある。この音の渦の中に、私はきっと、光を見つけられるだろうという確信がある。あなたにとってもそんなアルバムになるはずだ。
有泉智子(MUSICA)